Saint Jeannet 太陽が育むワイン作りの村、サン・ジャネ

太陽が育むワインの村 

ニースからわずか30分。青い海を背に、岩山の麓に佇む小さな村サン・ジャネは、太陽の光をたっぷり浴びて自然に熟成される“太陽のワイン”で知られています。静かな時間が流れるこの村は、ワインと自然、そして人々の温かさが感じられる癒しの場所です。

地理と村の風景

サン・ジャネ村は、ニースから北西へ約20km、ヴァンスから7kmの場所にあります。標高約400mの位置にあり、さらにその背後には「バウ・ド・サン・ジャネ(Baou de Saint-Jeannet)」と呼ばれる標高800mの岩山がそびえています。
この岩山はハイキングの名所として人気で、頂上からは村はもちろん、メルカントゥール山脈の峰々やニースの丘、アンティーブ、カンヌ湾、そしてレランス諸島までを一望できる壮大なパノラマが広がります。

人口は約4,000人。中世の趣を残した石造りの家々が並ぶ、こぢんまりとした美しい村です。

Eric Barnabé Photographie

歴史

サン・ジャネの歴史は古く、11世紀の文献にはすでにバウの麓に村が存在していたことが記されています。当時、村を囲む城壁や門は外敵や疫病から住民を守るために築かれ、現在もその名残を見ることができます。村の古い家々は「メゾン・ブロック」と呼ばれる伝統的なプロヴァンス建築で、3~4階建ての細長い家が坂道に寄り添うように並んでいます。


Eric Barnabé Photographie

ワイン造りの伝統

サン・ジャネのワイン造りの始まりは、なんと2,000年前のローマ時代。南向きで日当たりがよく、冷たい北風を遮る崖に守られたこの土地は、ブドウ栽培に理想的な環境でした。

1950年代までは村中の人々がワイン造りをしていましたが、現在ワイナリーを営んでいるのはわずか2軒。そのうちの一つが、村の中心から2kmほど離れた場所にあるジョルジュさんのワイナリーです。ジョルジュさんは代々続く家族経営のワイン生産者で、弟さんは画家。ワインのラベルデザインを手がけるなど、家族の温かい絆が感じられます。彼の造る“太陽熟成ワイン”は、フランス国内のみならず、日本をはじめ世界中のワイン愛好家にも親しまれています。

太陽の力で熟成する“Vin Tuilé”

ジョルジュさんのワインが特別なのは、その熟成方法。テラスには丸い形のワインボトルがずらりと並び、太陽の光をたっぷり浴びています。

これは偶然から生まれた伝統。
昔、ジョルジュさんのお父さんが屋根の修理中にワインを屋根の上に置き忘れ、数ヶ月後に見つけて飲んでみたところ、驚くほどおいしくなっていたのだそうです。それ以来、太陽光で自然に熟成させる方法が受け継がれています。この製法はフランス語で「Vin Tuilé(ヴァン・テュイレ)」と呼ばれ、日差しの強さにもよりますが、6~8ヶ月間太陽に当てて酸化防止剤を使わずに熟成させます。ロゼワインの場合は9ヶ月ほど熟成させるため、やや琥珀色がかった優しい色合いに仕上がります。

芸術家たちの村

1950年代、静けさと光に魅せられた芸術家たちがサン・ジャネに集いました。詩人であり画家でもあったジョルジュ・リブモン=デセーニュは1944年から亡くなる1974年までこの村に暮らし、彼を訪ねて「ダダ宣言」で知られる詩人トリスタン・ツァラや作曲家ジョゼフ・コスマも滞在しました。

詩人ジャック・プレヴェールもこの地を愛し、村のブドウ祭りのために「vignette pour les vignerons(ワイン生産者たちへの詩)」を贈っています。芸術と自然、そして人の温もりが交わるサン・ジャネならではのエピソードです。

アクセス

サン・ジャネへは、サン・ローラン・デュ・ヴァール(Saint-Laurent-du-Var)やカーニュ・シュル・メール(Cagnes-sur-Mer)からバスが運行しています。
車の場合は、ニース中心部から約30分ほど。ワイナリーや岩山の展望スポットへも車でアクセスできます。

マイコートダジュールでは、オリジナルコースニースっ子の小さな村めぐりでサン・ジャネへご案内しています。

太陽と大地の恵みを感じながら、素朴で温かい村の魅力を体感してみてください。

⭐︎リンク
サン・ジャネ市のサイト