マチスの礼拝堂がある中世の町、ヴァンスを訪ねて
ニースから少し足を延ばした場所にあるヴァンスは、画家アンリ・マチスが手掛けたロザリオ礼拝堂があることで知られる美しい町です。長い歴史を持つ中世の面影が色濃く残るヴァンスの魅力をご紹介します。
ヴァンスってどんなところ?
ヴァンスは、ニースから北西に車で約40分、標高約400mのサン・ジャネ山のふもとに位置しています。人口は約2万人弱で、ニースで働く人々の住宅地としても人気が高く、便利なベッドタウンとしての側面も持ち合わせています。山間の歴史ある町でありながら、アクセスしやすいのが魅力です。
【歴史の豆知識】 ヴァンスの歴史は非常に古く、紀元前3000年頃には人々が住み始めたと言われています。ローマ時代には重要な中継地点となり、中世には「司教の町」として栄えました。20世紀に入ると、温暖な気候と美しい景色、そしてマチス、シャガール、デュビュッフェといった多くの著名な画家たちが移り住んだことから、世界に知られる観光地となります。シャガールがニースのシャガール美術館にある大作「聖書のメッセージ」を制作したのも、ヴァンス滞在中の約13年間と言われています。
マチスは第二次世界大戦中、戦火を避けてニースからヴァンスに移り住み、約5年間を過ごしました。この地で彼は、後に自身の代表作となるロザリオ礼拝堂の制作に取り組みました。
ヴァンスの見どころ
ヴァンスは、中世の城壁がほぼ完全な形で残っている珍しい町です。旧市街は、カタツムリの殻のように渦巻き状になった路地が特徴で、散策するだけでもその歴史を感じられます。
1. ヴァンス大聖堂
旧市街の中央広場にあるヴァンス大聖堂(Cathédrale de la Nativité de la Vierge)は、町のシンボルの一つです。幾度かの修復と増築を経て現在に至ります。この大聖堂の見どころは、聖歌隊席の左手奥にある洗礼室に飾られたシャガールのモザイク画です。暗い場所にあるため見つけにくいですが、ぜひ探してみてください。
2. ペイラの門と噴水
城壁に残る5つの門の一つ、ペイラの門(Porte de Peyra)をくぐると、その内側に1822年建造のペイラの噴水があります。この周辺は、ヴァンスの歴史を感じさせるフォトジェニックなスポットです。
3. ロザリオ礼拝堂(マチスの礼拝堂)
ヴァンスを訪れる最大の目的となるのが、ロザリオ礼拝堂(Chapelle du Rosaire)、通称「マチスの礼拝堂」でしょう。 ヴァンスのバスターミナルから坂道を徒歩約10分ほどの場所にあります。
この礼拝堂は、建物全体、ステンドグラス、壁のタイルに描かれた絵、祭壇に至るまで、すべてをマチス自身が構想し、デザインを手がけた唯一無二の芸術作品です。シンプルな外観とは裏腹に、内部はマチスの色彩感覚が凝縮された、息をのむような空間が広がります。
特に印象的なのは、大理石の床や白いタイルの壁に映し出される、黄色、緑、青のステンドグラスの光です。黄色は太陽や神の光、緑は自然や植物、青は地中海と空を表していると言われています。
マチスが病に伏せっていた頃、彼の看護にあたっていたジャック・マリー(後に修道女となる)の「礼拝堂を作りたい」という願いを聞き入れ、1947年から制作を始め、4年後の1951年に完成させました。マチス自身も、この礼拝堂を自身の集大成となる代表作と考えていたと言われています。
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